・肝臓班

 肝臓は解毒を行う重要な臓器の一つであり,その体積の3分の2を失っても元の形状に戻るという優れた再生能力を保持している.しかし,肝臓の細胞を体内から取り出してしまうと解毒などの機能が大幅に低下し,優れた再生能力をも失うことが知られている.そのため体外で肝臓を再生させる際に肝機能を体内と同じレベルにまで引き戻すことが重要な課題となっている. 肝臓班では機能向上にせん断応力などの力学刺激が関与していると考え,力学刺激が肝機能に与える影響について調査している.また,機能以外にも肝ガンの進行を力学刺激によって抑制させるといった研究も行っている.

・血管内皮細胞班

 血管は全身に血液を運び,臓器や細胞を維持する重要な器官である.血管は血流量を調整する機能を持つ.この機能が低下すると血行障害など様々な疾患につながるが,機能の仕組みは解明されていない.そこで本研究は,細胞と力学刺激との関連性に着目した.血管内面に存在する血管内皮細胞は,血流による流体せん断応力といった力学刺激を絶えず受けている.この刺激に細胞内のタンパク質PKCαが反応し,刺激の情報を細胞内に伝え,調整機能に働きかけると考えられている. 本研究室では血管内皮細胞に対し,引張・つつき・せん断の異なる力学刺激を実際に与え,この時のPKCαの状態を観察することで,PKCαと力学刺激との関連性を調査している.また,細胞内・外の物質輸送に関するコンピュータシミュレーションも行っている.

・肺班

 肺胞は呼吸に伴い膨張収縮を繰り返すが,その変形は肺実質の複雑な形状や肺組織の弾性,肺サーファクタントによる表面張力に支配され,複雑な変形に伴う気道末梢部位での流れや肺胞壁の力学状態は十分に把握されていない.そのため,呼吸運動によって大きく変形する中で,肺胞を構成する細胞の力学的環境やそれに対する細胞応答も明らかになっていない.特に肺が炎症しリモデリングが起こると,肺サーファクタント分泌量や肺胞壁の機械特性が健常肺とは異なり,力学環境の変化による細胞の機能変化も考えられる.本研究では,健常時および肺リモデリング時の気道末梢部位の力学環境とそれに対する細胞の力学応答を明らかにすることを目指している.そのために,高輝度放射光CTを用いて気道末梢部位の肺実質微細構造の動態解析を行い,その結果に基づき肺胞内の流れ場および肺胞壁の力学状態を把握する.さらに細胞培養実験により肺胞上皮細胞機能の変化を細胞内・細胞間シグナル伝達の側面からも検討する.